テレビの天気予報によれば明日は午前中曇りだが午後は雨である。 台風二十一号が東北地方に接近中らしい。 明日は松島を見て石巻に泊まればよいとして、その先は北へ進路を変え 古い町並みの残る登米を訪ねるつもりであるが、途中大きな町もなくて 旅館を見つけるのに苦労するかもしれない。 そんなことを考えながら旅館のロビーで目に入った芭蕉の歩いた 仙台から塩釜までのイラストマップを眺めているうちに、このルートを 逆に辿ってここはひとまず仙台から家に帰ろうかという考えも頭を かすめた。 果たして翌朝は曇りでどんよりとした雲がいかにも厚い。 老舗旅館の老女将が美しい声で「あいにく夕方から本格的な雨に なりそうで」と声をかけてくれるのを聞いたとたん、里心がついて しまった。 私は芭蕉の歩いた道のイラストマップをコンビニでコピーして その道を辿って仙台に出ることにした。 御釜神社を左折し雲上寺をくの字に曲がってというようにイラストに 忠実に従った。 物語で詩情豊かにうたわれる多賀城址も思いがけず訪れることができた。 しばらく走るとスコールのような雨になったので岩切駅前の喫茶店に 飛び込んだ。 開店前だがコーヒーだけなら用意できるというのでコーヒーを飲みながら マスターと四方山話をしながら雲の切れるのを待つ。 雨はすぐ上がったが地図を見ながら走るのはいかにも興がそがれる。 私は腕時計にはめこんだ方位磁石と相談しながら好き勝手な道をたどって とにかく仙台にたどり着いた。 仙台駅の近くに宮城野という地域がある。 そこに榴ヶ岡神社というのがあって境内に芭蕉の他、俳人歌人達の 句碑歌碑が並び立っている。 私はそれらを眺め、これを今回の旅行の終止符とすることにした。

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